塗装店の立場から水性塗料を考える。

建築用塗料として水性塗料が増えてきましたが、皆さまは水性塗料にどのようなイメージをお持ちでしょうか。

今回は創業51年目を迎える塗装店の視点から、水性塗料を使用してきた実体験と感想をお話しします。

〇水性塗料は高い?

塗料価格は溶剤系の材料に比べると少し高めです。これは利益を上げようとしてるのではなく、単純に歴史が浅いからです。

溶剤系も時間を掛け商品開発を続けてきたからこそ価格もこなれているので、評価が高まって生産量が増えていけば、それに応じて値下げも進むと思われます。

〇水性塗料は「エコ」?

塗料を注文するときは、現場が滞りなく施工できるように「余裕」をもって注文します。なので「必ず」余りが出るのですが(条件によっては1缶近くになることも)

今のところ水性塗料は一般的に色被りが悪い(透けやすい)ので、余った塗料を他の現場に再利用するには

「他色と混ぜて仕上がりの色に似せる」必要があります。

それに伴い余分に塗料を注文したり混合する作業が増えたりと、溶剤系に比べて材料費・労務費ともにコスト増になります。

余った塗料の整理と保管(イメージ)

また、水性塗料は溶剤系塗料に比べてまだシェアが小さいので、必然的に「余りは長期保管」になります。塗料は保管していると、有効成分が沈み固着しますが、水性塗料はそれが溶剤系よりも早いです。

したがって管理も溶剤系より頻繁に行わなければなりません。ちなみに「水性塗料」といえど「産業廃棄物」として処理しなければならないのは他の塗料と同じです。

〇水性塗料は膨らむ?

泡立ったように膨らんだ外壁
泡立ったように膨らんだ外壁

モルタル外壁の場合、弊社では昔「水性の厚膜塗料」で細かなヒビを隠したりしてました。ですが今では下地処理で充分(専用フィラー)隠せるので、仕上塗料を厚膜にする必要はないでしょう。

また、サイディング外壁には「水性の厚膜塗料」はおすすめしません。水性塗料の塗膜は溶剤よりも伸び縮みする傾向があるので、経年劣化などで壁や屋根の内部から出る水蒸気が塗料の許容量を超えてしまうと、外壁が泡立つように膨らむ可能性があるのです。

〇まとめ

材料費、管理費、施工後の予期せぬ異常など。塗装店の立場では外壁への水性塗料は「溶剤系塗料より費用がかさむ」という印象です。

時代の流れがそうなるのであれば仕方ありませんが、最終的には上に挙げてきたコストの増加を

「お客様が許容できないのでは?」という話しになってしまいます。