「10年持てばいいから」はちょっと違う。( R4改定)
「10年持てばいいから。」
塗り替えのお見積を作成するため調査にお伺いすると、時折このような言葉をお客さまから頂戴します。なにかそれは「中間の品質の(リーズナブルな)塗装でいいから」といった意味合いでお話下さっているようにも感じます。ですが「10年持つ塗装工事」というのは必ずしも「リーズナブル」ではないのです。
仮に「10年後に剥がれ出すような状態」として考えます。「剥がれ出す状態」というのは、剥がれの予備軍(浮いているが見た目に判らない)が沢山隠れていて、限界を迎えた一部が表出している状態のことです。下地がこうなってしまっては、その上に何度塗装しても耐久性は著しく落ちてしまっていて元には戻せません。これは「10年持つ」という事とは違いませんか?
「10年経った時、劣化はしているが健康な塗膜で、次の塗り替えに耐える事が出来る塗装」としてみましょう。10年のあいだ健康な状態を保つのは、弱溶剤系のアクリルシリコン塗料が最適です。これを「リーズナブルに」するためには、少し方向を変えてみる事が大事です。
戸建て住宅の場合、単純に塗料のランクを変えるだけでは金額に変化はあまり出ません。工事費の大勢を占めているのは(下地調整や清掃作業、余計な所に塗料を飛ばさないための養生作業や足場を囲うシートetc)人件費です。ですが単純にこれらの作業を省略してしまったら、それはもう「リーズナブル」ではなく「手抜き」です。
効果的かつ耐久性を犠牲にしないコストダウンの方法は「塗る箇所を減らす」もしくは「塗る回数を減らすことが出来る材料を使う」事です。例えば軒天井は、日光が当たらないので劣化が起きにくい場所です。旧塗膜や基材に剥がれや浮きなどの異常が無ければ、密着材の工程を省略することが出来る浸透性塗料が使用できます。
外壁でも立地の環境によってはコストダウンが可能です。外壁に全く日光が当たらない箇所があれば、シリコン→ウレタンとしても問題ないと思われます。それが大面積であれば金額にも響いてくるはずです。
塗装工事というのは昨今のDIY(日曜大工)ブームも手伝って、身近な技術に感じられている方も多いかと存じます。ですが専門職の造る塗膜というのは「剥がれなくてあたりまえ」「時期が来ても美観を保ち健康な塗膜である」品質が必要です。それを造るには臨機応変な知識と技術が必要で「塗るなんて簡単」「オレでも出来る」のような事では、決してないのです。
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