「古い木部を塗装した場合、泡状に膨らむことがありますよ」これは塗り替え工事のときに事前にお客さ
まにお伝えしていたことですが、やはりポコポコと数カ所が膨らんでしまいました。これは年月を経てい
る木部への塗装では「宿命」かもしれません。
新しい木材は、樹脂と繊維が内部までスキマ無く絡み合ってそのカタチを形成しています。当然そのよう
な木材には塗装しても何の異常も現れませんが、屋外の環境は過酷です。太陽の紫外線は目に見えません
が塗膜を通過して内部に入り込み、木材の樹脂をゆっくりと風化させていきます。
そうして年月が経った木材の内部は腐食し、水分が浸透しやすくなっています。塗装で閉じ込められた水
分は太陽光で温められると体積が増えますが、水が水蒸気に変わるときの体積比は約1700倍。塗膜の
密着力ではとても抑えきれず、最終的にポコッと膨らんでしまうのです。
結局屋外では塗料自体の耐候性がいくら良くても、木の呼吸を妨げてしまうので相性としては悪いのだと
思います。とはいえ木材と相性が良いとされる防腐剤やオイルフィニッシュでは2,3年ごとに塗装が必
要とされており、とてもそんな頻度ではコスト的に手が掛けられないというのも現実です。木材が多用さ
れていた頃の住宅メーカーにとっても、木材というのは暗に「古くなったら取り替えろ」的な材料だった
のかも知れませんね。